ホラー映画の中には「モキュメンタリー」といったジャンルが存在します。
モキュメンタリーとは具体的に「実録/ノンフィクション」を模した表現手法を指しており、「ホラー」との相性も抜群です。
モキュメンタリーだからと言って「”全てがフィクション”とは必ずしも限らない」ため、視聴者はより現実的に/より深く、身近に恐怖を感じることができます。
今回はそんな「モキュメンタリー作品」の傑作として一部でカルト的な人気を誇るホラー映画「ノロイ」をご紹介します。「なんだか出てくる人皆実名みたいだけど、どこまでが事実なの?」と、おそらくは疑問に思われることでしょう。
ご興味ございましたら、本記事と合わせて以下の過去記事もご覧下さい。
【第一話 予言】を読みたい方はこちらから
【第二話 感染】を読みたい方はこちらから
【第三話 輪廻】を読みたい方はこちらから
【過去記事(〜四話)】を読みたい方はこちらから
☆本記事は、映画の核心に迫るネタバレを避けるために、あえて大まかにご紹介させて頂いております。このコーナーが読者の皆様の「内なる興味」を引き出すきっかけとなれば幸いです。
【映画/ノロイ(2005)】「 多分ね、もう全部だめなんだよ。」不可解な失踪の謎!コバヤシの追った「ノロイ」の正体!
今回ご紹介する映画は、怪奇ルポを生業とする一人の作家が、冒頭からいきなり「ドキュメンタリー作品(ノロイ)」のテープだけを残し、不可解な失踪を遂げる場面から始まります。一時はお蔵入りとなった映像作品「ノロイ」は、やがて関係者各位の協力のもと、「白石晃士氏」を監督に立てて、2005年に「映画」という名目で世間に公表されました。
今回の物語は、失踪を遂げた「実話作家コバヤシ」が主人公。
・失踪したコバヤシの残した「テープ」の中身とは?
・頻出する「かぐたば」というワードの意味するものとは?
・現在に帰結する物語/公表に至るまでの経緯とは?
漫画形式でお楽しみ下さい。
怪奇実話作家の小林雅文が行方不明になった。
自宅が全焼し、妻の景子は焼死。ところが小林本人の死体は見つからない。何処へ消えたのやら。
小林は失踪する直前まで、ある怪奇事件を追い掛けていた。その一部始終をまとめたのが、ドキュメンタリー『ノロイ』である。
事の発端は「隣の家から赤ん坊の泣き声がする」という主婦からの相談だった。
問題の家には石井潤子という女と少年が暮らしていた。ところが赤ん坊はいない。では、あの泣き声は何なのか。
小林が訪ねてみると、潤子は甚だ感じの悪い女で、取材にも非協力的だった。やがて彼女は少年を連れて転居してしまう。後に残されたのは、大量の鳩の死骸である。おまけに相談者の母娘まで交通事故で死んでしまった。どうにも縁起が悪い。
同じ頃、テレビの超能力番組に矢野加奈という11歳の少女が出演していた。
これがなかなか大した少女で、並外れた超能力を披露したのだが、番組出演後に様子がおかしくなり、「たすけて」と書き残して失踪してしまう。
小林が調査すると、失踪前の加奈を訪ねていた男がいた。
堀光男という自称霊能力者である。
この男、自宅をアルミ箔だらけにして「呪い電波」だの「霊体ミミズ」だのと騒いでいる。どう見ても危ない人なのだが、困ったことに云っていることが妙に核心を突いているのである。
そしてもう一人、事件に巻き込まれたのが女優の松本まりかだった。
心霊番組の収録に参加して以来、怪現象に悩まされるようになった彼女は、無意識のうちに糸や針金で無数の輪を作るようになる。
さらに寝室を撮影した映像には、こんな声まで入っていた。
「かぐたば」
なんだそりゃ。
小林が調べてみると、これがちゃんと存在した。
ダム建設によって消滅した下鹿毛村では、昔から「かぐたば」なる禍々しい存在を鎮める祭が行われていたのである。
最後の祭を記録した古い映像も残っていた。そこで儀式の最中に錯乱している少女がいる。
若き日の石井潤子だった。
つまり、最初の女がここで再登場するわけだ。
さらに調べると、潤子は後年、違法な中絶に関係する施設で働いており、処分されるはずの胎児を何体も持ち去っていたことが判った。
嫌な話になって来た。
その頃、松本まりかの周囲では死人まで出始める。知人の君野みどりが首吊り自殺。さらに複数の男たちが、公園で仲良く首を吊って発見された。
彼らを吊るしていた縄の形は、まりかが無意識に作っていた例の「輪」と同じだった。
小林はまりかと堀を連れ、旧下鹿毛村へ向かった。昔の儀式を再現して、かぐたばを鎮めようというのである。
ところが儀式の途中で堀が錯乱し、森へ駆け込んでしまう。
追い掛けた小林が見つけたのは、大量の犬の死骸。そして失踪していた矢野加奈だった。
加奈の周囲には胎児のようなものが無数に蠢いている。ただし肉眼では見えない。カメラには映るのである。実に厄介な連中だ。
その後、小林は遂に石井潤子の居場所を突き止めた。
しかし、既に遅かった。
潤子は首を吊って死亡。矢野加奈も死んでいる。
生きていたのは、潤子と一緒に暮らしていた例の少年だけだった。
しかも調査すると、この少年は潤子の実の息子ではなかった。
身寄りのない子供を放っておくわけにもいかない。小林は妻の景子と相談し、少年を自宅で引き取ることにした。
これで一件落着なら良かったのだが、もちろんそんな筈はない。
後日、小林は「かぐたば」に関する古い資料を発見した。
昔の儀式では、巫女となる少女に生贄として殺した猿の子供を食わせ、それによってかぐたばを呼び出したのだという。
そこで小林はようやく石井潤子の企みを理解した。
潤子が持ち去っていた胎児は、生贄だった。
そして強力な超能力を持つ矢野加奈を誘拐し、巫女として利用した。
つまり潤子は、猿の代わりに人間の胎児を使って、かぐたばを呼び戻そうとしていたのである。
なんとも傍迷惑な話だ。
小林は一連の事件をドキュメンタリー『ノロイ』として完成させた。
ところが、話にはまだ続きがあった。
ある日、小林宅に精神病院から脱走した堀光男が押しかけて来た。
そして小林を襲うや、彼が引き取った少年を指差して叫んだ。
「こいつが、かぐたばだ」
堀は石を手にすると、少年の頭を何度も殴りつけた。
すると血まみれになった少年の顔が、カメラの中で一瞬、異形の怪物へと変貌した。その背後には死んだはずの矢野加奈まで立っている。
堀は正しかったのである。
もっとも、正しいと判ったところで既に手遅れだ。
堀は何者かに操られたように少年を連れて立ち去ってしまった。
そして妻の景子にも異変が起こる。
虚ろな表情で家中にガソリンを撒き、自分にも浴びると、そのまま火を放った。
家は炎上。
景子は死亡。
小林は行方不明。
ここで冒頭の事件へと繋がるわけである。
その後、堀光男も異常な状態の死体となって発見された。
ところが、小林雅文の死体は遂に見つからなかった。
そして、あの少年も行方知れずのままである。
つまり、かぐたばが今何処にいるのかは誰にも判らない。
まったくもって、引き取る子供は選んだ方がいい。
【漫画】映画『ノロイ』を大まかに紹介!


【解説】映画の見どころ&補足〈筆者の感想〉
記事冒頭でも触れたように、この映画の特色はなんと言っても「モキュメンタリー」として終始している点が挙げられます。
モキュメンタリーとはつまるところ「あたかも実話に見せかけた作り話」です。したがって『映画ノロイ』の内容も結局はフェイクに過ぎません。
しかしながら、本作に集約された怪奇記録の数々や、映画としての公開に至るまでの経緯(建前)も含め、どこまでもリアリティを追求した作り込みがなされているため、観ていて思わず現実の出来事であると錯覚しかねない作品となっています。
ちなみに本作は公開当時のプロモーションにおいても、作品に関連する架空の人物・団体のウェブサイトを展開するなどして反響を呼びました。まさしく本作は「モキュメンタリーに徹した意欲作」であるとも言えます。
【映画/ノロイ(2005)】個人的評価
映画「ノロイ」の個人的評価としては以下の通りです。
《怖さの度合い》★★★★★(強靭なホラー耐性がある人におすすめ)
《理由》観る者によっては「強烈な恐怖・嫌悪感」を抱きかねない演出・描写が随所に見られるため。
筆者は本作を公開当時(2005年)にも鑑賞しましたが、少年心にもこれまでにない異質な映画であることが感じ取れて、同時に深く戦慄した記憶があります。
今現在改めて観直しても、つくづく恐ろしく興味深い映画だなと再認識させられるばかりで、「個人的には」まさしく傑作に位置付けられるホラー映画ではないかと感じています。
ただ、実はこの映画、公開当時の世間的評価は大きく分かれていたようです。
『傑作』と評する人がいる一方で、『駄作』と酷評する人間も決して少なくなかったとの記録があります。
’20年代以降では映画・小説問わず「モキュメンタリー作品」の数がにわかに増えており、特に昨年2024年は「空前のモキュメンタリーホラーブーム」と評されるほど一部界隈で人気を博したジャンルでもあります。
しかし’00年代前半時点においては、そのような作品がほぼほぼ存在しませんでした。『映画ノロイ(2005)』はまさに「現在のモキュメンタリーホラーブームに繋がる先駆け」のような作品であったと言っても過言ではないでしょう。
以下、個人的な推察ではありますが、本作は「先駆け」として出現した作品であったがために、公開当時はどうしても理解を得がたい側面があったのかもしれません。
特殊な形式のフィルムであったからこそ、「映画」として観るには違和感を感じる人や、全般的にチープであると感じる人が一定以上いたとしても、正直無理はないように思われます。
それでもやはり、後のモキュメンタリーホラーブームに繋がる契機の一つとして、本作は間違いなく好影響を及ぼしているように感じられます。実際「モキュメンタリーホラー」の傑作として本作を挙げるマニアの方も多く、刺さる人にはとことん刺さる秀逸な作品であるとも言えます。
【終わりに】
今回の記事はお楽しみ頂けましたでしょうか。
本特集は筆者の都合により、現在のところ不定期更新でお届けしています。
今後徐々に公開スパンを見直し、安定して発信していけるよう努めてまいります。
最後までお目通しいただき、ありがとうございました。
次回もよろしくお願いいたします。
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